ジャガイモの種類

ドイツ人にジャガイモについて聞いてみると、彼らのジャガイモへのこだわりを感じさせられます。「あの料理を作る時はこの品種、サラダの時はあの品種」と言った具合に、それぞれがジャガイモとの付き合い方をよく心得ています。

ドイツではジャガイモを、(1)調理しても形がくずれない「煮くずれしないタイプ」、(2)最もポピュラーな「煮くずれしにくいタイプ」、そして(3)柔らかくホクホクとして「煮くずれやすいタイプ」と、3つの調理タイプに分類し、それぞれの品種がどのような調理方法に向いているかを定義付けています。これらはジャガイモの持つ水分とデンプン質の割合の違いから生じるもので、デンプン質が多くなれば水分は減少し、ジャガイモはホクホク感を増すことになるわけです。また収穫時期が遅い晩生になると、ジャガイモの持つデンプン質も多くなります。

ジャガイモ料理を美味しく作り、美味しく食べるコツは、その料理にどのタイプのジャガイモが適しているのかを知り、正しいタイプのジャガイモで調理することです。自分の好みのジャガイモだけを全ての料理に使うのではなく、それぞれを使い分けてこそ本当のジャガイモ通と言えるわけです。

ジャガイモの品種

ドイツには何百と言ってもよいほど、数多くのジャガイモ料理がありますが、ここではポピュラーで、ドイツでよく食べられている基本となるジャガイモの食べ方・料理を幾つかご紹介いたします。もちろん、それぞれの料理は地方・地域あるいは家庭によって、様々なバリエーションがあることは言うまでもありません。
ドイツでのジャガイモの食べ方で基本中の基本というと、シンプルな茹でジャガイモです。これには大きく分けて2種類あります。ザルツ・カルトッフェル(Salzkartoffel)と呼ばれる塩茹でジャガイモと、ペル・カルトッフェル(Pellkartoffel)と呼ばれる皮付き茹でジャガイモです。またジャガイモの一番おいしい食べ方と言われている蒸かしジャガイモ(ダンプフ・カルトッフェル:Dampfkartoffel)は皮付きのまま蒸かします。これらの茹でジャガイモは付け合せとしてだけでなく、軽い夕食のメインとして、あるいは食材の一つとしていろいろなメイン料理へとアレンジされます。

塩茹でジャガイモ(Salzkartoffel) 作り方: ジャガイモの皮をむいてから1/2あるいは1/4に切り、塩を入れた水から約20分程中火で茹でます。付け合せにする場合は、供する直前に茹で上がるようにして、最後にパセリのみじん切りあるいはディルなどのハーブをかけ食卓へ供します。またバターをまぶすこともあります。

皮付き茹でジャガイモ(Pellkartoffel) 作り方: 小から中ぐらいの大きさのジャガイモを皮付きのまま茹でます。そして茹で上がったらそのまま食卓へ出し、各自銘々が皮をむいて食します。またこの皮付き茹でジャガイモにクワルクとオイル(またはバター)を添えて供するドイツ伝統料理もあります。地方によってはオイルに「あまに油(Leinöl)」 を使う所もあります。

次に忘れていけないのは、誰からも愛されているポテトサラダ(Kartoffelsalat )です。
ドイツのポテトサラダを大きく分けると、ビネガーを用いたさらっとしたドレッシングタイプのものと、マヨネーズやヨーグルト、あるいはクワルク(カード)を使ったクリーム状のソースタイプのものがあります。さらにドレッシングをかけるポテトサラダにも、温かいドレッシングをかける温サラダ系と、冷やしたドレッシングをかける冷サラダ系等があります。どちらにしても、ポテトサラダは誰からも愛されているジャガイモ料理です。
皮付きのジャガイモをアルミホイルで包みオープンで焼いたフォーリエ・カルトッフェル(Foliekartoffel)はバター、あるいはクワルクやハーブを加えたクリーム系のソースと一緒に食します。カルトッフェル・ズッペ (Kartoffelsuppe:ポテトスープ)は特に寒い時期によく食されます。またジャガイモ以外にもいろいろな種類の季節の野菜を入れて具だくさんのスープ、アイントプフ(Eintopf)を作ることも多くあります。茹でたジャガイモを食べやすい大きさに切って、玉ネギやベーコンと一緒に油で炒めたブラート・カルトッフェルン(Bratkartoffern)はドイツでは全国どこでも誰からも好まれている一品です。また日本でもおなじみのマッシュポテト(カルトッフェル・ピュレー:Kartoffelpüree)もメイン料理の付け合せとして食べる機会の多いジャガイモ料理です。その他にもクヌーデル(Knödel)あるいはクロス(Kloß)と呼ばれるジャガイモをすりおろして作る団子や、ライベクーヘン(Reibekuchen)あるいはカルトッフェル・プッファー(Kartoffelpuffer)と呼ばれるジャガイモのパンケーキも人気があります。

ジャガイモの品種

ドイツでは「ジャガイモ品質等級令」(Verordnung über gesetzliche Handelsklassen für Speisekartoffeln) の中で、ジャガイモの特性を3つの調理タイプに分類し、ジャガイモを販売する際に表示するように義務付けています。

これとは別に、作型(収穫時期)による分類では、5月中旬ごろから8月上旬にかけて収穫される「早生種」(極早生と早生に分ける場合もある)、8月中旬以降10月始めごろまで収穫される「中早生種」、そして9月下旬から10月に収穫される「晩生種」(晩生と中晩生・極晩生に分ける場合もある)とに分けられます。

次に、それぞれの調理タイプ別の主なジャガイモの品種を、どのような料理にどのタイプのジャガイモが向いているのかも含めて、ご紹介いたします。

煮くずれしないタイプ

煮くずれしにくいタイプ

煮くずれやすいタイプ

残念ながらドイツ産の生鮮ジャガイモは植物検疫法の関係で日本には輸入されておりません。もし何かの機会にドイツへ旅行されることがありましたら、その時には旅先のレストランで出されたジャガイモの品種名をお尋ねになってみてください。季節や土地によってジャガイモの品種は変わってきますが、必ずやその旬の一番美味しいジャガイモを出しているはずです。