ドイツの食肉加工品

ドイツの代表的な食品はと聞かれれば、何と言ってもまずは「ソーセージ」と答える方が圧倒的に多いでしょう。また逆に「ソーセージは・・・」と聞かれれば「ドイツ」と答えが返ってくることでしょう。「ドイツとソーセージ」、それは切っても切れない関係にあります。世界にその名を馳せているドイツのソーセージ―その品質の高さ、美味しさ、さらにはそのバラエティに富んだ種類の豊富さが、ドイツ国内はもちろんのこと、世界中のグルメを魅了しています。

ドイツではメツゲライ(Metzgerei)と呼ばれる肉屋やハム・ソーセージ取扱い専門店、そして高級食材店などでは、大きな冷蔵ショーケースをはさんだ、対面式の販売方法が一般的です。販売員がお客の希望や好み、また作る料理などに適したハム・ソーセージを、いろいろなアドバイスをまじえながら販売しています。街中のメツゲライで、ショーウィンドウに並んだ数々のハムやソーセージ、上から吊るされたサラミやヴュルストヒェン(細型や小型のソーセージ)を見ると、足を止めてじっくりと眺めずにはいられません。

もちろん、スーパーやデパートの食品売り場でも、ハム・ソーセージ類には広い販売スペースが設けられています。さらにセルフの冷蔵コーナーにもパック詰めされたハム・ソーセージ類がバラエティ豊富に並び、消費者のニーズに応えています。

ではこのドイツのハム・ソーセージにはいったいどのようなものがあるのでしょうか。

ドイツの食肉加工品事情

ドイツ語でソーセージを一般にヴルスト(Wurst)、細く長めのものや小型のソーセージをヴュルストヒェン(Würstchen)と言います。この他にも、シンケン(Schinken=ハム)類、ジュルツェ(Sülze=アスピック寄せ)類など、多くの種類がありますが、何と言ってもやはりドイツの食肉加工品の代表選手はヴルストでしょう。ヴルストの製造の歴史は中世にさかのぼることができ、すでに1256年のランツフート(Landshut、バイエルン州内の一市)の町の市場規則(Marktordnung)で、「ヴルストは良質の豚肉のみを使って製造すること」という製造方法が規定されていました。

このように何百年という歴史をもつソーセージは、ドイツ国内のいろいろな地方や地域で、その土地伝統の味に発展し、人々に愛され、今日まで営々と受け継がれてきたわけです。それは多くのソーセージに、その土地の名前がつけられていることにも見てとることができます。例えば、日本でもお馴染みの「フランクフルト・ソーセージ」は、ドイツ語でフランクフルター・ヴュルストヒェン(Frankfurter Würstchen)と言い、これはフランクフルト(ヘッセン州)生まれのソーセージです。この他、ニュルンベルク(バイエルン州)生まれのニュルンベルガー・ローストブラート・ヴルスト(Nürnberger Rostbratwurst)や、レーゲンスブルク(バイエルン州)生まれのレーゲンスブルガー・ヴルスト(Regensburger Wurst)など、ドイツにはその土地の名前のついたソーセージがたくさんあります。

ではいったいドイツにはソーセージの種類がどのくらいあるのでしょうか?実にその数、推定でも1,750種があると言われており、ドイツのソーセージは世界でも比類のないバリエーションを誇っているのです。

そしてドイツではこの種類豊富なソーセージをその製造方法によって、ローヴルスト(Rohwurst、非加熱ソーセージ)、ブリューヴルスト(Brühwurst、茹ソーセージ)、コッホヴルスト(Kochwurst、煮ソーセージ)の3種類に分類しています。この3つの違いを知ることは、ドイツソーセージの世界をより一層広げ、ドイツソーセージを美味しく食べることに繋がるのです。以下、それぞれのカテゴリーをクリックしてご覧ください。

ローヴルスト(Rohwurst、非加熱ソーセージ)
ブリューヴルスト(Brühwurst、茹ソーセージ)
コッホヴルスト(Kochwurst、煮ソーセージ)