発酵乳製品

発酵乳製品のことをドイツ語でザウアー・ミルヒ・プロドゥクテ(Sauermilchprodukte)と言います。ザウアーは酸っぱい、あるいは酸味のあると言う意味で、ミルヒはミルク、牛乳のことを言いますので、ザウアー・ミルヒは文字通り「酸味のある牛乳」と言うことです。この酸味は牛乳に乳酸菌を加えることによって生まれます。加熱殺菌処理をした牛乳を冷やし、それぞれの乳業メーカーが持つ乳酸菌を加えます。乳酸菌を加えると、牛乳に含まれる乳糖が発酵し乳酸を生み、酸味を持つものとなるのです。さらに牛乳の中のタンパク質がふわふわとした形状になり、牛乳がドロッとした状態になってくるわけです。こうして出来る乳酸は、私たちの体内で消化やミネラル分の吸収を助ける等などいろいろな活躍をします。このすぐれた乳酸を含む発酵乳は、長いその歴史の中で多くの人から愛され食されてきた乳製品なのです。 ドイツではヨーグルトをはじめとする発酵乳製品が年間約183万トン生産されており、その一人当たりの年間平均消費量は2006年で17.2kgとなっています。2001年の消費量は14.8kgでしたので、この6年間で発酵乳製品の消費量が2kg以上増えていることになります(統計出典:ZMP)。いかに健康に気をつけて食生活を送っているかを見ることができる数字と言えますね。 ドイツの発酵乳製品には、皆様よくご存知のヨーグルトをはじめ、ケフィア(Kefir)、ブッター・ミルヒ(Buttermilch)、ザウアー・ミルヒ(Sauermilch)、そしてディック・ミルヒ(Dickmilch)と呼ばれるものなどがあります。次に、これらの発酵乳製品をご紹介してまいりましょう。

ヨーグルト(Jogurt)

ヨーグルトはトルコ語の「yoğurt」を起源に持つことばで、ドイツ語でも英語と同じように「ヨーグルト」と発音します。綴りは「Y」を使って「Yoghurt」と書く場合もありますが、現在ではJoghurtと「J」で書かれることが一般的となっています。また「Jogurt」と「h」を抜いて書かれる場合も多く見られます。さてドイツのヨーグルトは牛乳あるいはクリームに乳酸菌を添加し、42~45℃で発酵させて作られています。スプーンですくって食べるタイプのヨーグルトは個別容器に充てんしてから発酵させるのに対して、飲むヨーグルトのように液体タイプのものは、まずタンクの中で発酵させ撹拌し、その後パッケージに充てんされて製品となります。 因みに、ドイツでは固まったヨーグルトをシュティッヒフェスター・ヨーグルト(stichfester Joghurt)、液体状のヨーグルトをゲリュールター・ヨーグルト(gerührter Joghurt:かき混ぜたヨーグルトの意)、あるいはトリンク・ヨーグルト(Trinkjoghurt:飲むヨーグルトの意)と呼んでいます。 クリームヨーグルトはザーネ・ヨーグルト(Sahnejoghurt)あるいはラーム・ヨーグルト(Rahmjoghurt)とも呼ばれる、クリームから作られるヨーグルトです。また表からもおわかりのように、これらヨーグルトの種類には、乳脂肪分の含有量は変えず、酸味をマイルドにしたものが製造されており、それぞれヨーグルト・ミルト(Joghurt mild)と言うようにミルト(=マイルド)をつけて呼ばれています。 またこれらのプレーンタイプのヨーグルトの他に、ドイツでは果物を添加したフルーツ・ヨーグルト(Fruchtjoghurt)や、ミュズリやチョコレートを加えたヨーグルトも製造販売されており、お好みで、また食べる時間によっていろいろな味のヨーグルトが楽しめます。朝はミュズリの入ったヨーグルトを、おやつにはチョコレートの入ったものや、クリームヨーグルトを、夜のお休み前にはプレーンタイプのものやフルーツ・ヨーグルトなどはいかがでしょうか。

ケフィア(Kefir)

皆様の中には「ケフィアって知ってる、飲んだことある」とおっしゃる方と、「ケフィアって何?」とおっしゃる方がいらっしゃると思います。昨今、ケフィアは日本でもスーパーなどで見かける機会が多くなり、知られるようにはなってきましたが、まだあまりお馴染みとは言えないのが現実のようです。 ケフィアはアジア出身のすっきりとした味わいの発酵乳で、ケフィア・ケルナー(Kefirkörner)あるいはケフィア・クノルヒェン(Kefirknöllchen)と呼ばれるケフィアの菌を牛乳に加えて作ります。このケフィアの菌には乳酸菌だけでなく酵母菌も含まれていることから、発酵の過程で微量のアルコ-ルと炭酸が生じます。これがドリンクタイプのヨーグルトとは違う、ケフィアの特徴ある味覚を生み出しているわけです。因みに乳業工場で製造されるケフィアには0.1~0.6%以下のアルコール分が含まれています。 また現在ドイツでは、酵母菌を含まないケフィア・ケルナーを用いて作るケフィア・マイルド(Kefir mild :ケフィア・ミルト)と呼ばれる製品も製造されています。これにはアルコール分と炭酸が含まれていないため、子供用として人気があります。 ヨーグルトと同じように、ケフィアも乳脂肪分含有量の違う製品とマイルドにした製品が作られています。ザーネ(=クリーム)を使って作られるクリーム・ケフィア(乳脂肪分は10%以上)や、フルーツを加えたケフィアもあります。 ご参考までにケフィアを使ったドリンクのレシピを1つご紹介いたします。 ラズベリーとケフィアのスムージー (Himbeer-Kefir-Smoothie mit Mandellikör) 材料(4人分): ラズベリー(冷凍)300g、アプリコット(ビン・缶詰のもの)150g、ケフィア500g、バニラ棒1本、アーモンドのリキュール大さじ4 作り方: アプリコットはビンあるいは缶から取り出し、水気を切り、小さく切っておきます。またバニラ棒は縦に切れ目を入れ、スプーンでバニラビーンズをかき出しておきます。 ケフィア、ラズベリー、バニラビーンズ、アプリコット、アーモンドのリキュールをミキサーに入れ、はじめは回転数を抑えて撹拌し、その後、高速回転にしてピュレにします。 グラスに注いで出来上がりです。体に良いケフィアのスムージーをお楽しみください。

ブッターミルヒ(Buttermilch)

ブッターミルヒのブッターはドイツ語でバターを意味しますので、文字通りバターミルクのことです。ブッターミルヒはバターを作る際にできる副産物で、軽い酸味があり、ほんの少しどろりとした発酵乳飲料です。ただしアルコール分は含まれていません。 それではここでちょっとバターの製造工程を思い出してみましょう。生乳を遠心分離器に入れ、クリームとマーガーミルヒ(Magermilch)と呼ばれる脱脂乳(スキムミルク)に分離させます。そしてこのクリームを加熱殺菌した後、熟成させます。熟成が終わったクリームを8~10℃の温度に下げ、大きな回転するシリンダー形状の機械の中に入れ撹拌します。ここで熟成の段階で結晶粒となった乳脂は凝固してバターとなり、液体のブッターミルヒから分離します。 こうして生まれるブッターミルヒはバターの種類によって違いがあります。クリームに乳酸菌を加え発酵させて作る発酵バター(ザウアーラーム・ブッター:Sauerrahmbutter)の製造工程で生じるブッターミルヒにはすでに軽い酸味がありますが、非発酵バターであるズュースラーム・ブッター(Süßrahmbutter)の製造工程でできるブッターミルヒは、非発酵であるため、酸味はありません。そこでこの非発酵のブッターミルヒに乳酸菌、あるいはブッター・クルトゥアー(Butterkultur)と呼ばれる菌を加え、酸味のあるブッターミルヒに加工します。 ブッターミルヒの乳脂肪分は通常0.5%程度となっており、『乳製品令』の中でも乳脂肪分は1%以下と規定されています。 このバターミルクは、日本では流通販売されていませんが、ドイツでは、牛乳に含まれる栄養素をたくさん引きついでいて、健康に良い食品として、好んで飲まれています。

ザウアーミルヒ(Sauermilch)、ディックミルヒ(Dickmilch)

ザウアーミルヒ(Sauermilch)はその名のとおり「酸味のある牛乳」で、液体状の発酵乳です。またディックミルヒのディック(dick)は「厚い、太った、濃い、ドロッとした」と言った意味を持つ言葉で、ここでは「ドロっとした牛乳」という意味で、固体状に近いスプーンですくって食べる発酵乳製品を指します。この二つ、ザウアーミルヒ(Sauermilch)とディックミルヒ(Dickmilch)は基本的には同じもので、その違いはスプーンで食べるタイプか、ドリンクタイプかにあります。ディックミルヒをザウアーミルヒと呼ぶこともあるようですが、『乳製品令』ではザウアーミルヒをディック(ドロッと)にさせたものがディックミルヒと定義付けしています。 いずれも牛乳やクリームに乳酸菌を加えて作りますが、ヨーグルトに使う乳酸菌とは違う菌が使われ、発酵温度もヨーグルトより低いものとなっています。またこれらは、ヨーグルトやケフィアと同じように製造段階で使われる牛乳の種類によって、低脂肪ディックミルヒやクリームを使って作るザーネ・デイックミルヒなどといったように、種類豊富に製造されています。